2007年08月04日

難病と言われた話

 2001年の4月、会社の成人病検診で便に潜血反応が出て、大腸ファイバーの精密検査を受けた。
 精密検査を受けた浜松のM病院は、痔や大腸の病気では全国的に有名な病院らしい。待合は大勢の患者さんであふれかえっていた。
 病院に行き受付を済ませると検査着に着替えさせられ、病棟の休憩室みたいなところに連れて行かれた。看護婦さんが何やら液体の入ったボトルを2本(1本1リットルくらい)とコップを持って来て「これ、全部飲んでしまってください。時間がかかってもかまいませんから。途中でトイレに行きたくなったら行ってもいいですよ。」と言って、僕を残して行ってしまった。
 僕は恐る恐る1本目のボトルの液体をコップについで飲んだ。グェッ、まずい。それはまさに海水の腐ったような味であった。一口ずつ頑張って、時々残っている液体の量に絶望しながら飲んでいった。1本目の半分くらい飲んだところで看護婦さんが「飲みましたか?」と言ってきた。「まだです(時間がかかってもいいと言ったじゃん)。」
 なんとか1本目を飲み終えて、2本目にかかったら、おっ、これはポカリだ。これなら飲める。腹は一杯だが、ポカリならなんとかなると、こっちは結構早く飲み終えた。
 すると、まもなく猛烈な便意が襲ってきた。トイレに通う事十数回。途中、看護婦さんが来て「出てくるものが完全に透明になったら声をかけて下さい。」と言っていった。それからまたトイレに出たり入ったり。ようやく出てくるものが透明になったので看護婦さんに声をかけたら、看護婦さんは出てきたものを確認して「はい、じゃあ検査室に行きますから。」と、僕を検査室に連れて行った。
 検査室で先生を待っている間に「検査中に事故があっても文句を言いません」みたいな同意書にサインさせられた。
 先生が来て「じゃあ、始めようか。」と言うと、看護婦さんが僕の腕に何やら注射をして、数秒後には意識が無くなった。
 「おい、君。」先生の声で目が覚めた。猛烈に眠い。「君、腹痛くないか?下痢してないか?」先生が僕に聞いている。「いいえ、なんともありません。」と、答えたのを覚えている。とにかく、数ミリの小さなポリープがあって、それを取ったので今日は入院だそうだ。僕は病室にストレッチャーで運ばれながら、また寝てしまった。
 「ご飯ですよ。」の声に起こされて、周りを見ると6人部屋の病室に寝かされていた。まだ眠かったし、夕食はスゲェまずかった。
 夕食後、ナースステーションに呼ばれて先生から説明を受けた。ポリープは数ミリで小さいので問題はない。しかし、大腸の右側に潰瘍が出来ていて炎症をおこしていると言う。難病の潰瘍性大腸炎かクローン病が疑われると言うのだ。とにかく、今日の検査で採取した標本を詳しく調べて対処すると言う。
 一週間後、僕は再びM病院を訪れた。検査の結果を聴くためだ。先生は検査の結果を書いた紙を見ながら難しい顔をして「やはり炎症をおこしているね。潰瘍性大腸炎を疑わなくてはいけない。」と言う。しかし、自覚症状が何も無い僕には全然ピンとこない。インターネットで調べたが、潰瘍性大腸炎なら下痢とか腹痛の自覚症状があるはずだ。「ひどくなったら手術で腸を切り取らなくてはならないよ。」と先生は脅す。「薬を出しましょうか?」と聞かれたので「納得がいかないので、経過観察にしてください。」と言って、投薬はやめにしてもらった。帰り際、先生が「潰瘍性大腸炎は大腸癌になりやすいから気を付けな。」と、捨て台詞のように言った。
 その後、二人の消化器内科の医者(二人とも医学博士だ)に相談してみた。二人とも一笑に付して「潰瘍性大腸炎のわけがない。」と言う。潰瘍性大腸炎は大腸の直腸に近い方、つまり左側に出来るのが普通であって、右側に出来たのは見たことがないという。また、そんな炎症があったくらいで潰瘍性大腸炎と診断していたら、世の中潰瘍性大腸炎だらけになっちゃうよ、と言う。なんでも薬を飲んでも大腸に潰瘍や炎症が起きる事がしばしばあるそうだ。一人の医学博士はポリープを取ったことまで言及し「今時、そんな小さなポリープは取らないよ。患者に負担をかけるばかりだしさ。ポリープ一個取ったら10万円だもんね。」と言った。実際、僕は健康保険の2割負担(当時)で4万円くらい払った。
 その後、会社の健康保険組合に仕事で行った時「M病院で潰瘍性大腸炎って言われちゃってさ。」と話したら、会社にも潰瘍性大腸炎の患者が数名いるという。数名いる?潰瘍性大腸炎は統計では10万人に3人の難病だぞ。社員数2,000人の会社になんで数名も潰瘍性大腸炎の患者がいるんだよ。
 そのまま数年がたったが、僕はなんともない。毎年の検診でも便に潜血反応が出ることも無い。腹も痛くなければ下痢が続く事も無い。

 最近、近所の看護婦をしていた奥さんに面白い事を聞いた。浜松市には潰瘍性大腸炎やクローン病の患者が妙に多いそうである。
posted by マーク at 10:42| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする